理学療法士は毎年右肩上がりに人数が増えている傾向にあります。一方で、人数が増えるにつれ、理学療法士の質の低下が問題視されています。日本理学療法士協会では、認定理学療法士という資格を用意し、理学療法士の資質と専門性の向上の促進を図っています。
それでは認定理学療法士がどのような資格なのか、詳しく説明していきます。
目次
認定理学療法士とは?
日本理学療法士協会では、理学療法士の資質の向上、専門分野における職能的な水準の引き上げ、自発的な学習の継続を促すため、生涯学習制度という制度を運用しています。主に、協会会員を対象にさまざまな学習機会などを提供しています。生涯学習制度の中の資格の一つが、認定理学療法士です。
認定理学療法士は、自らの専門性を高め、高い専門的な技術の維持、社会や組織の中での理学療法士の専門性を高めていくことを目的としています。
また、より専門的に学びを深められるように、7つの専門分野23の領域から成り、それぞれの認定領域ごとに認定されます。以下が認定理学療法士の分野と領域です。
<基礎理学療法専門分野>
①人を対象とした基礎領域 ②動物・培養細胞を対象とした基礎領域
<神経理学療法専門分野>
③脳卒中 ④神経筋障害 ⑤脊髄障害 ⑦発達障害
<運動器理学療法専門分野>
⑦運動器 ⑧切断 ⑨スポーツ理学療法 ⑩徒手理学療法
<内部障害理学療法専門分野>
⑪循環 ⑫呼吸 ⑬代謝
<生活環境支援理学療法専門分野>
⑭地域理学療法 ⑮健康増進・参加 ⑯介護予防 ⑰補装具
<物理療法専門分野>
⑱物理療法 ⑲褥瘡・創傷ケア ⑳疼痛管理
<教育管理理学療法専門分野>
㉑臨床教育 ㉒管理・運営 ㉓学校教育
認定理学療法士の資格取得後も、知識や技術を維持し高度な専門性を保てるように、5年ごとに資格の更新が義務づけられています。
認定理学療法士取得までの流れ
認定理学療法士になるのは日本理学療法士協会に所属し、認定理学療法士試験を受けなくてはいけません。受験資格は下記となります。
・新人教育プログラムが修了している(約1年)
・新人教育プログラム修了後、専門領域に登録し2年が経過している
・全領域共通の研修を受講している
・認定理学療法士を目指す分野の認定必須研修会を受講している
・各領域の講習会受講や学会に参加し100ポイントをためる
・事例や症例報告を10例提出する
以上の6つになります。この受験資格を満たすと、毎年3月上旬頃に行われる認定試験を受験することができます。認定試験は、筆記試験、ポイント審査、症例報告の審査の3つで決められます。筆記試験に過去問等はなく、認定必須研修会を受講した際に出題傾向を伝えられるのみです。幅広い問題が出題され、傾向もつかみにくいので、難易度は高いと言えるでしょう。
2022年より生涯学習制度が変わる!?
多様化するニーズに対応するため、2022年より新生涯学習制度がスタートします。日本理学療法士協会に入会すると、約2年の前期研修と約3年の後期研修を履修します。履修が修了すると「登録理学療法士」となります。この登録理学療法士は、5年ごとの更新制となります。
新生涯学習制度での認定理学療法士は、さらなる高みを目指すものであり、登録理学療法士とは別に、5年ごとの更新制になるようです。
前期研修、後期研修の履修に要する時間から分かるように、理学療法士全体の質の向上が求められています。新生涯学習制度での認定理学療法士は、よりスペシャリストと言えるでしょう。
認定理学療法士はどのくらいいるの?
2020年現在で、延べ11745人が認定理学療法士を取得しています。理学療法士全体の9%ほどの割合です。この数字からも資格取得の難しさがうかがえますね。
このうち近畿エリアに18人しかいない学校教育認定理学療法士が、奈良リハビリテーション専門学校に2人在籍しています。学校教育のスペシャリストに指導を受けることができる、魅力的な学校と言えるでしょう。(2020年10月1日現在)
認定理学療法士になるメリット
認定と名がつく資格に、認定看護師があります。認定看護師の場合は、認定看護師が関わることで、診療報酬が加算されます。
しかし、残念ながら現行の認定理学療法士制度にはそのような要件はありません。
9%しかいない資格を取得できたことは大きな自信になると思いますし、何よりも豊富な知識と専門性を持って、質が高い理学療法が行えます。これは他の理学療法士にはない強みであり、もし今後転職等をする場合でも役に立つこと間違いありません。
まとめ
理学療法士の人数が増加する中、質の低下が問題視されています。刻々と変わるニーズと臨床現場に対応し、対象となる方を治療するには自己研鑽が必要です。認定理学療法士の取得は難しいですが、資格を取得することで、自信をもって対象者と向き合い、良い治療が行えます。
また、認定理学療法士になることで、他の理学療法士と差別化をつけるチャンスでもあります。
認定理学療法士を取得するのは難しいですが、今後のニーズも考えると目指しておいて損はありません。