理学療法士は国家資格であり、社会的にも安定していると言われています。
しかし、一方では理学療法士の人数が増え、就職先がなくなるのではないかという不安を持っている方もいるのではないでしょうか。ここでは理学療法士の現状と将来性について説明していきます。
目次
理学療法士を取り巻く現状
最近では「理学療法士は飽和状態になってきている」という言葉をよく耳にします。現在、毎年1万人前後の理学療法士が誕生しています。日本理学療法士協会に所属する理学療法士の人数は、増加傾向であり、現在は12万人を超えています。2010年の記録では約6万6000人であり、10年で倍以上の増加です。
一方で、20代で就業した理学療法士の就業率は、約90%以上となっています。理学療法士の雇用状況は比較的安定していると言えます。しかし、理学療法士の人数が増えれば、自分が希望する施設への入職は、競争率が上がることで難しくなると思われます。
また、人数の増加に伴い、理学療法士の質の低下が問題となっています。希望する職場に入職するためには、理学療法士としての知識や質を高めることが大切です。
理学療法士に将来性はあるの?
日本の65歳以上の高齢者は、3617万人で、総人口に占める割合は28.7%となり、過去最高を更新しています。医療や介護を必要としている人達が増えてきており、今後も医療や介護の分野で理学療法士の必要性が高まると思われます。現状でも、理学療法士の職域は広がっており、将来的にも様々なチャンスがあると言えるでしょう。
以下で新しい理学療法士の働き方を紹介します。
地域で活躍する理学療法士
住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるような、住まい、医療、介護、福祉、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築が国を挙げて進んでいます。その中で、身体と環境を包括的に評価し、リスク管理を行いながら活動を高めることができる理学療法士の専門性が必要とされ、介護・介護予防に携わる理学療法士が増えてきています。
今までの理学療法士は施設内で治療をすることが多かったのですが、地域に赴き地域のお年寄りに関わるのは、理学療法士の新しい働き方と言えるでしょう。日本理学療法士協会にも、包括ケアシステムを推進するにあたり、資格を設けて地域包括ケアシステムに関わることのできる人材を育成しており、需要は高いと言えます。
起業する理学療法士たち
近年では、起業している理学療法士が増えています。原則として、理学療法士は医師の指示のもとに理学療法を行わなければいけません。
しかし、医療ではなく、マッサージや体のコンディショニングなどの健康や美容を目的とした分野での開業は可能です。
理学療法士の中でも、より徒手技術の専門性を磨くことで、自分のサロンを開くことも選択肢のひとつになりました。また、理学療法士で働いた経験を活かし、リハビリテーション向けのアプリケーションや機器の開発・販売を行う理学療法士、セミナーの開催、リハビリ特化型のデイサービスの経営を行う理学療法士も登場しています。理学療法士として働くのではく、経営なども行わなくてはならず、廃業などのリスクも抱えながらの運営になりますが、経営者という新たな挑戦に立ち向かう理学療法士は増えてきています。
広がる職域、対応する学びの場
現代社会において、理学療法士の活躍する領域に応じて、科学的根拠に基づいた理学療法の確立が求められています。そこで、より専門的に学問としてそれぞれの領域が発展していけるように、日本理学療法士協会では平成25年より12の分科会と10の部門が設立されています。
【分科会】
・日本運動器理学療法学会
・日本基礎理学療法学会
・日本呼吸理学療法学会
・日本支援工学理学療法学会
・日本小児理学療法学会
・日本神経理学療法学会
・日本心血管理学療法学会
・日本スポーツ理学療法学会
・日本地域理学療法学会
・日本糖尿病理学療法学会
・日本予防理学療法学会
・日本教育理学療法学会
【部門】
・産業理学療法部門
・精神・心理領域理学療法部門
・徒手理学療法部門
・物理療法部門
・理学療法管理部門
・ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法部門※
・栄養・嚥下理学療法部門※
・学校保健・特別支援教育理学療法部門※
・がん理学療法部門※
・動物に対する理学療法部門※
※平成25年度に新設 以上のように様々な分科学会と部門があり、それぞれの分野で臨床研究や講習会が開催され、専門的に学ぶ機会が用意されています。学ぶ場が増えることで理学療法士全体の質の向上に高まり、より信頼される資格となることで、職域の拡大が期待されます。
理学療法士は将来性がある職業と言えるでしょう。
まとめ
確実に理学療法士の人数は増えてきています。
しかし、理学療法士の職域は、高齢化や多様化するニーズに伴い、拡大し続けており、将来性は高い職業です。多様化するニーズと理学療法士の将来性に、自分自身が対応できるよう、しっかりと勉強をして知識と技術を身につけましょう。