近年、医療分野や介護分野で、ロボットの導入が進められています。ドラマの中でも、医療ロボットを使用して手術をする場面も見られるようになりました。介護用のロボットも一般発売され始めており、ロボットを利用した生活や医療のイメージが浸透してきました。リハビリの世界でもロボットは普及してきており、新しいロボットの開発や効果、実施方法などの研究が進んでいます。ロボットリハビリテーションとは何か、効果などをご紹介していきます。
目次
- ロボットリハビリテーションとは
- ロボットリハビリテーションの効果
- リハビリテーションに利用される様々なロボットについて
1.歩行アシスト(Physibo Walk)
2.HAL
3.ReoGO-J - 今後のロボットリハビリテーションはどうなる?
- まとめ
ロボットリハビリテーションとは
ロボットリハビリテーションは、ロボットをリハビリテーションの手段として活用し、身体機能や能力の改善を図るものです。歩行のサポートをするものや、腕や手の機能をサポートするもの、動きを評価分析するロボットなど、様々な種類のロボットが存在しています。ロボットリハビリテーションは、脳卒中や脊髄損傷、骨折、肺炎などの内科的疾患の治療後体力が落ちている方などが対象となります。対象となる方の状態に合わせて、その方にあったロボットを使用します。
ロボットリハビリテーションの効果
ロボットリハビリテーションの特徴は「身体をアシストし目的の動作を正確に行える」「そして繰り返して練習ができる」ことにあります。障害がある方や体力が落ちた方は、動かしにくい体でなんとか自分で動こうとするあまり、効率が悪い動き方を学習してしまうことがあります。
しかし、ロボットを利用し、動作をアシストしながら正しい動作を反復して練習することで、効率が良い動作を獲得しやすくなります。効率が良い動作は、動いていても疲れにくく、対象となる方の日常生活や活動範囲の拡大が期待できます。
また、脳卒中などで脳機能が障害されると、その部分の細胞は再生することはありませんが、他の部分で補おうとする機能があります。その機能を促通するのが反復刺激だと言われています。ロボットを使用し、正確な動作の反復刺激を与え、脳の損傷部位を補う脳機能を促通する方法も広がってきています。
リハビリテーションに利用される様々なロボットについて
リハビリで使用されるロボットは、歩行を改善させるもの、腕の機能を改善させるもの、評価を行うものなど様々です。どのようなロボットが活躍しているのか、紹介していきます。
・歩行アシスト( Physibo Walk )
「倒立振子モデル」に基づく効率的な歩行をサポートする歩行練習機器です。股関節の動きをモーターに内蔵されたセンサーで検知し、制御コンピューターがモーターを駆動します。足の振り出しの誘導と、蹴り出しの誘導を行います。腰と両方のふとももにベルトで装着するだけのシンプルな機構で、装着しやすく、フィットしやすい特色があります。
また、データをその場で解析しスマートフォンなどで確認でき、対象者と問題点が共有しやすいという利点もあります。奈良リハビリテーション専門学校では全国で初めてこの機器を導入し、ロボットリハビリテーションの教育に活かしています。
・HAL
「装着型サイボーグ」と紹介されていますが、腰から足までロボットが装着され、股関節、膝、足首の動きをサポートします。HALの特徴は、人が動かそうとすると脳から神経に流れる生体電位信号を皮膚に張ったセンサーで検出し、意思に従った動作を実現することにあります。
また、股関節から足首までサポートすることで、重度な麻痺がある方も対象となります。
・ReoGO-J
こちらは、上肢用のロボット型運動訓練装置です。脳卒中後などの患者が対象で、麻痺がある腕の関節の動きが固くならないように、ロボットを使い、リーチ動作(ものをとるために手を伸ばす動作)を行います。
他にも、腕や足を切断した方に対してコンピューターで制御する義手や義足、皮膚につけた電極から神経に電気刺激を流し筋肉や関節を動かす電気刺激装置、VR技術を利用したトレーニングなど、様々なロボットが登場しています。
今後のロボットリハビリテーションはどうなる?
近年、世界的に再生医療が注目されていますが、脳卒中の再生医療の治療後に、ロボットを利用したリハビリテーションを行うことで、相乗効果が期待されています。
また、2020年の診療報酬改定では、ロボットを使用した反復練習を行うことでの機能回復が認められ、ロボットリハが推進される項目が追加されました。
一般用の介護ロボットもテレビCMで流れるようになり、今後、様々なロボットが普及し、ロボットを利用したリハビリテーションも広がっていくと思われます。
一方で、ロボットリハビリテーションについて、教育が行える養成校が少ないのが現状です。今後ますます普及していくロボットリハビリテーションに対応できる理学療法士になれるよう、ロボットリハビリテーションを学べる養成校を選択してみてはいかがでしょうか。
まとめ
脳や体の機能の研究が進み、ロボットとの相乗効果が期待され、各分野での研究や開発が進んでいます。ロボットリハビリテーションでは、ロボットを利用し正しい動作が反復して行えることがメリットであり、脳卒中や骨折後、内科的疾患で体力が落ちた方など様々な方に対し効果が認められています。
しかし、あくまでもロボットは利用するものであり、利用するためにリハビリテーションの技術や知識が重要となります。しっかりと基礎を学びつつ、最先端に対応できるセラピストを目指しましょう。
また、ロボットリハビリテーションを学べる養成校はまだまだ多くありません。需要が高まるロボットリハビリテーションをしっかり学べる養成校を見極めましょう。